ブラートソーセージ
ブラートソーセージBratwurstが意味するものは、2つある。
(広く一般的な意味)ブラートソーセージは、たいてい豚肉を使い(時には、また種類により牛肉も)、普通は亜硝酸塩で発色させない、人工物でない本物の腸に詰めた、一般的な調理法としてフライパンに油をひいて、あるいはグリル網の上で焼く加熱ソーセージBrühwurstの総称。(なお、特別な種類の(燻煙し、そのまま食べられる)ブラートソーセージとして、こちらも参照。)
この名称Bratwurstは語源的にはドイツ語の「焼くbraten」とは関係ない。この名称Bratは加熱ソーセージの中に詰める挽肉Brätに由来するので、@字義通りに解釈すると大部分の加熱ソーセージが含まれてしまう。Aしかし普通は限られたタイプのものがブラートソーセージと呼ばれる。このタイプは上記のように焼いて食べることが多いが、焼かない調理法もある。B多くの一般人は名称のBratをbratenだと思っており、ブラートソーセージというと「焼くためのソーセージ」および「焼いたソーセージ」だと思い込んでいる。
ドイツのブラートソーセージでもっとも一般的な売り方・食べ方は、インビス(ソーセージスタンド)で切れ込みを入れた小型丸パンに挟んで売るもの。小型丸パンの切れ込みは、アメリカン・ホットドッグのように縦ではなく、ハンバーガーのように横に入れるのが普通。長いソーセージの場合は、パンの両端からソーセージが長々と突き出ていることもある。好みによりマスタード、ケチャップを付けて食べる。ソーセージスタンドではなく飲食店でソーセージが食べられる地方は限られてしまうが、そのさいはザウアークラウトまたはじゃがいもサラダまたは西洋わさびKrenをすりおろした物が付け合せとなる。またニュルンベルクやフランケンのブラートソーセージ調理法として、Blaue ZipfelまたはSaure Zipfelと呼ばれるものがある。輪切りたまねぎ、酢、ローリエ、粒胡椒、クローブ、ヴァホルダーの実で煮汁を作り、小型のブラートソーセージをその中で煮る(つまりこの料理ではブラートソーセージを焼かない)。酢のためにソーセージの表面が青みblauをおびるので、この名が付いた。パンまたは小型丸パンと一緒に食べる。
Saure Zipfel。上に載っていたたまねぎは撮影の邪魔なので取り除いた。試食報告は郷土料理レストラン編に。
ブラートソーセージを肉屋で買う場合は生の(新鮮な)ものが買えるが、スーパーマーケットなどで売られているものは日持ちの都合から加熱処理されている。
焼くためのブラートソーセージRostbratwurst。スーパーマーケットにて。焼いて焼き色が付く前は、白っぽい色をしている。これは亜硝酸塩で発色させていないことを意味すると同時に、日持ちの都合からすでに加熱処理してあることも意味している。
(地域限定の意味)ブラートソーセージはまた一部の地域(フォークトラントと呼ばれるザクセン、テューリンゲン、バイエルン、チェコにまたがる地域や、ザクセン全域など)で、ポーランド風生挽肉ソーセージRohe Polnischeのような生ソーセージRohwurstをも意味してきた。この意味は使われなくなりつつあるが、上記の(広く一般的な)意味でのブラートソーセージを焼きブラートソーセージRostbratwurstまたはロースターRosterと呼べば、この(地域限定の)意味と区別される。
ここから先は、前者の(広く一般的な)意味でのブラートソーセージについて、その様々な種類を挙げる。
テューリンゲン・焼きブラートソーセージThüringer Rostbratwurstはテューリンゲンのソーセージだが、美味い焼きソーセージの代表格としてドイツ中で広く知られている。長さ15-20cm、太さ15mmほど。味は、マヨラナ(マジョラム)が特徴的。伝統的には炭火でグリルする。このソーセージは人気があるので「テューリンゲン風」の類似品を含めて広く出回っているが、ドイツの多くの地方ではレストランにはない。インビスで焼いたものを買うか、スーパーマーケットなどでパック入りを買ってきて自宅で焼く。インビスでは切れ目を入れた小型丸パンに挟んで売られ、マスタードを付けて食べる。ケチャップは伝統的に使わない。旧東ドイツの地方だけは、郷土料理レストランのメニューとしても食べられる。このソーセージが文献に初めて現れたのは1404年だが、その後時代と共に形を変えた。2004年以降「テューリンゲン・焼きブラートソーセージThüringer Rostbratwurst」の名は保護されており、テューリンゲンで作られたものだけに許される。類似品は「テューリンゲン風」と名乗らなければならない。
テューリンゲン・焼きブラートソーセージ。インビスにて。
テューリンゲン・焼きブラートソーセージ。試食報告は郷土料理レストラン編に。
ゾネベルク・焼きブラートソーセージSonneberger Rostbratwurstは、ゾネベルクのソーセージ。テューリンゲン・焼きブラートソーセージの近似種で、コーブルク・ブラートソーセージとも似ている。(ゾネベルクはテューリンゲン州にありながらコーブルクにとても近いので、いわば当然の結果だ。)
北ヘッセン・ブラートソーセージNordhessische Bratwurstは、ヘッセンのうちテューリンゲンに隣接した北東の地域のソーセージ。テューリンゲン・焼きブラートソーセージにとても似ているが、もっと粗挽きで香辛料が効いている。長さ20cm、太さ15mmほど。炭火でグリルし、切れ目を入れた小型丸パンに挟んで売られる。好みによりマスタードを付ける。
フランケン・ブラートソーセージFränkische Bratwurstは、フランケン地方のブラートソーセージの総称。肉は比較的粗挽き、大きさは地域により異なり、長さ10-20cm、太さ15-20mm。フランケン地方の郷土料理レストランで「2本クラウト付きzwei mit Kraut」「3本クラウト付きdrei mit Kraut」と注文すると、このソーセージにザウアークラウトが付いて出てくる。「2本サラダ付きzwei mit Salat」「3本サラダ付きdrei mit Salat」と注文すると、じゃがいもサラダが付いて出てくる。このソーセージは1573年に考案されたと言われている。
ヴュルツブルク・ブラートソーセージWürzburger Bratwurstは、ヴュルツブルクのソーセージ。テューリンゲン・焼きブラートソーセージと同じ大きさだが、フランケン白ワインを加えて作る。
コーブルク・ブラートソーセージCoburger Bratwurstは、コーブルクのソーセージ。豚肉のほかに仔牛肉を用い、香辛料にはマヨラナ(マジョラム)を含む。ニュルンベルガー等よりも粗挽きで、香辛料が効いている。腸詰は、焼く前の状態で31cmもの長さがある。とはいえ、焼いている間にソーセージは少し縮む。このソーセージはグリル網の下に松笠を敷き、松笠を燃やしている上でグリルする。横にではなく縦に切れ目を入れた小型丸パンEinzelbrötchen(2連小型丸パンDoppelbrötchenを使うことも)に挟んで売る。そのまま手に持って食べる。
コーブルク・ブラートソーセージ(上)と、燃える松笠の上で焼いている所(下)。
(試食)コーブルクのマルクト広場に一年中出ているという屋台を訪ねた。細長く、炭火焼の黒い炭が周りに付く。粗挽きで、味が濃い。せっかく2連小型丸パンを用意しているのに2つに千切って使っている。よく見ると、2つ並んだ屋台のうちの片方は松笠を使わず普通の炭火焼だった。(そのくせ屋台には「松笠で焼いた」の宣伝文句がある。)
ホーフ・ブラートソーセージHofer Bratwurstは、Hofer Brodwärschdとも呼ばれる。ホーフのソーセージ。近隣の地方のソーセージ(テューリンゲン、コーブルク、フランケン)が比較的粗挽きなのにたいして、ホーフ・ブラートソーセージは細挽きで脂肪分が少ない。
クルムバッハ・ブラートソーセージKulmbacher Bratwurstは、クルムバッハのソーセージ。仔牛肉を多く含み、極細挽きの肉に氷を加えて作る。
ニュルンベルク・ブラートソーセージNürnberger Bratwurstは、正式名をニュルンベルク・焼きブラートソーセージNürnberger Rostbratwurstと言い、ニュルンベルクのソーセージ。フランケン・ブラートソーセージに比べて細挽きで小型。長さは7-9cm、太さは1.5cmほど。焼く前の生の状態で20-25gしかない。羊腸に詰め、味はとりわけマヨラナ(マジョラム)が特徴的。「オリジナル・ニュルンベルク・焼きブラートソーセージOriginal Nürnberger Rostbratwurst」の名称は、ニュルンベルク市内で、決められたレシピに従って作られた製品だけに付けられる。このソーセージはブナ材を燃やす火でグリルする。飲食店では、普通は1ダースまたは半ダースを食べる。ソーセージは錫製の皿に載せ、Krenと呼ばれる西洋わさびを添えて出される。「6本クラウト付きsechs mit Kraut」と注文するとザウアークラウトが付き、「6本サラダ付きsechs mit Salat」と注文するとじゃがいもサラダが付く。いっぽう路上販売では、「Draa in an Weggla(=フランケン方言)」と注文すると、3本をひとつの小型丸パンに挟んで渡される。
ニュルンベルク・焼きブラートソーセージ。
プファルツ・ブラートソーセージPfälzer Bratwurstは、プファルツのソーセージ。このソーセージはフランケン・ブラートソーセージやテューリンゲン・ブラートソーセージよりも粗挽きにする。長さ15cm、太さ25-30mmほど。たいていザウアークラウトと一緒に食べる。
赤ブラートソーセージRote Bratwurstは、単にRoteとも呼ばれ、またBaddzawürschtとも呼ばれる。シュトゥットガルトのソーセージ。ボックソーセージに似ており、極細挽きの豚肉と脂身を使い、特別に香辛料が効いている。グリル時に皮が破裂しないように、皮にいくつも切れ込みを入れる。ソーセージの両端には十文字の切り込みを入れ、グリルすることで切り込みが開く。マスタードを付け、スライスしたパンと共に食べる。しかしまた多くの人がケチャップを付ける。このソーセージの香辛料の効いた味を、ケチャップが少しまろやかにしてくれる。
色々なインビスのローテ。
(試食)シュトゥットガルトとその周辺では、祭りの出店で赤ソーセージRote Wurstが売られる。これは口語では単にローテRoteと言う。普通Rote Wurstと一緒にブラートソーセージBratwurstも「お品書き」に並ぶ。つまり、亜硝酸塩で発色させない一般的なブラートソーセージの他に、この地方では亜硝酸塩で発色させた(中身が赤っぽい色の)ソーセージも同様に焼き、同様にケチャップまたはマスタードを付けて食べる。これをRoteと呼ぶ。なお、ネット上の情報のように特別な切り込みを入れたローテには私はお目にかからなかった。また、特別に香辛料が効いているものにも出会わなかった。
シレジア・ブラートソーセージSchlesische Bratwurstは、シレジア・白ブラートソーセージSchlesische weiße Bratwurst、シレジア・白ソーセージschlesische Weißwurstとも呼ばれる。とりわけオーダー/ナイセ川の東側地域のソーセージ。仔牛肉(今日では一部または全部を豚肉にすることも)、豚脂身に氷を加えて極細挽きにし、レモン汁と白ワインを加え、豚小腸に詰める。日持ちするように湯の中で加熱することもある。バターでじっくりと焼き、白っぽい色のまま焼き上がる。このソーセージは伝統的に待降節の間だけ作られ、クリスマスイブと新年にシレジアのソース(フィッシュソース、レープクーヘンソースなど)で食べる。
オルマ・ブラートソーセージOlma-Bratwurstは、スイス北東部にあるザンクト・ガレン州のソーセージで、ドイツ語圏スイス全土で有名。豚肉、仔牛肉、脂身に牛乳を加えて作り、白い色をしている。このソーセージはマスタードを付けて食べるのをタブーとする。オルマ・ブラートソーセージは、しばしばスイスで最高のブラートソーセージとみなされる。このソーセージの名称OLMAは、同名の見本市(東スイス農業乳業展示会Ostschweizer Land- und Milchwirtschaftsausstellung)に由来する。
ザンクト・ガレン州には、オルマ・ブラートソーセージと同じ中身で大きさの違うソーセージがある。ザンクト・ガレンのブラートソーセージSt.Galler Bratwurstは115g、オルマ・ブラートソーセージは165g、そしてザンクト・ガレンの子供祭りソーセージSt.Galler Kinderfestbratwurstは220gもある。子供祭りブラートソーセージはグリルするか、フライパンで焼くか、湯の中で20分加熱して食べる。ちなみにザンクト・ガレンの子供祭りとは3年に1回行われる祭りで、天気の良い日を選んで行うので開催日が前もってわからないという珍しいもの。祭りが行われることになると、すべての商店が閉店するだけでなく、市議会までがその日予定していた会議を延期するというから驚きだ。また、祭りが明日できそうだと言われて肉屋が子供祭りソーセージを翌日早朝に作り、その後天気が急変して祭りができなくなると、住民たちはすでにでき上がってしまったソーセージを片付ける(食べ尽くす)ために呼び出されるという。
農民ブラートソーセージBauernbratwurstについては、こちら。
ヴァートラントのブラートソーセージWaadtländer Bratwurstは、スイス西部にあるヴォー(ドイツ語ではヴァート)州のソーセージ。とぐろを巻いた形状に特徴がある。スイスの農民ブラートソーセージと同様の製法で作るが、豚小腸には1mの長さに詰める。この長いソーセージが肉屋では生のままで、ぐるぐるととぐろを巻いた状態で置かれ、量り売りされる。
フライブルクのミュンスター前インビス名物eine lange Rote mit Zwiebeln, halbiert。とても長いソーセージを2つに切っているが、halbierenでなくlanglassenと頼めば長いまま渡してくれる。
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